香葉村真由美さん 講演会講師のご紹介
女性版 “金八先生” と呼ばれるほど、子どもたちと熱心に向き合うことで有名な福岡の元小学校教師・香葉村真由美さん。全国から講演依頼が後を絶たず、その物語に誰もが涙を流します。
香葉村さんの講演では、子どもたちと向き合ってきた実体験を通じて、教育のあり方について考えさせられます。
けんかはしてもいい。でも真っ正面からしい。
ゴウという男の子がいました。
2年生のときまで髪の毛はモジャモジャ頭の金髪でした。授業を受けない。けんかを毎日する。トイレに行ったらトイレにこもって出てこない。
ある冬の日でした。長い廊下の向こうからゴウが歩いてきました。それが私とゴウの初めての出会いでした。ゴウの顔を見るとボクサーのように腫れていて、殴られたんだなとすぐ分かりました。手と足は肌色のところがなくて、全部紫色でした。
「ゴウ」と言うと、私から目を背けて「なん?」と彼は言いました。
「誰から殴られたの?」と聞くと彼は黙っていました。「お父さん?」と聞くと、「うん」と頷きました。
でも、彼は「お父さんが悪いんじゃない。僕が悪いんだ。僕が先生の言うことを聞かんけん、お父さんが怒って僕を殴った」と話しました。子どもはどんなときでも親をかばいます。
ある日、クラスメイトの子を後ろから思いっきり蹴っている彼を見ました。その瞬間、私は彼を引っ捕まえてグッと投げ飛ばしました。
彼は私を下からにらみ付けて「なんでこんなことをする!」と言いました。
「ゴウが好きだからよ! ゴウが好きだから先生は投げ飛ばしたんよ! ゴウが好きだから先生はゴウがしたことを許さん。なんでそんな卑怯なことをする! なんで弱い者いじめをする! けんかはしてもいい。でも真っ正面からしい。言いたいことがあるなら堂々と言いなさい! 先生はゴウがどんなに悪いことしてもお父さんには言わない。だから先生と2人でゴウの悪いところを直していこ!」
そこまで話すと、ゴウの目からみるみる涙が溢れてきました。「先生はお父さんには言わない?」と聞くゴウに、「言わない」と私が答えると、彼は声をあげて泣きました。
次の日、彼は金髪だった頭を坊主にしてきました。みんな笑いました。今までのゴウなら笑われると殴りかかっていったのに、みんなに笑われてゴウは嬉しそうでした。それから変わっていきました。クラスのリーダーとなって、私がいない時にはクラスをまとめてくれるまでになりました。
子どもたちの見えない心を感じとることが大切
彼は毎日、給食のナフキンとお箸を忘れてきました。
私のクラスでは、ナフキンやお箸を忘れたら、私の肩揉み100回というルールになっているんです(笑)。子どもたちは「先生の肩揉みなんか恥ずかしくてできないよ」と言い、忘れないようにします。
けれども、ゴウは毎日忘れてきました。「また俺忘れたよ」と言いながら、ゴウはいつも私の肩を揉んでくれました。そのときがゴウとのお話の時間でした。
ゴウが「先生、僕はね、木刀で殴られてたんだよ。お父さんはすごく怖くて」とか、「僕はね、いつも悪い子だって言われてたんだ。みんなと一緒にいても真っ先に注意されるのはいつも僕なんだよ」など、今までにあったいろんなことを話してくれました。
「そうなんだ」と、私はゴウの話を聞きました。
ある日、ゴウのお母さんに会った時、「お母さん、毎日ゴウはナフキンとお箸を忘れてくるんですよ。だから毎日私の肩揉みをしてるんです」と話したら、お母さんが「え? 先生、お箸とナフキンは毎日私がゴウの鞄の中に入れてますよ」とおっしゃいました。彼はただ、私に話を聞いてもらいたかったんですね。
子どもたちはいろんな問題行動を起こします。けれども、表面的なことだけに目を向けることは、時に子どもたちを追い込むことになるのではないかと思うのです。何を感じ、考え、思っているのか。子どもたちを育てるとき、見えない心を思うことを私はもっとも大事にしています
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命がけで子どもたちと向き合ってきた実体験から語られるお話は、感動しながらも教育のあり方について考えさせられるお話です。
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