
すぎやま よしえ杉山 由恵
- 肩書き
- 大阪大学 大学院情報科学研究科教授
- 出身・ゆかりの地
- 大阪府
この講師のここがおすすめ
数学の理論と医療現場の課題をつなぎ、「血流をはじめとする体の中の現象を見える化する」研究に取り組んでいる数学者です。難しい数式を並べるだけでなく、図や身近な例を通して「数学の目で世界を見る面白さ」を伝えることを大切にしています。AI や情報科学に興味のある中高生、医療・研究に関心のある一般の方にも、わかりやすくお話しします。
プロフィール
大阪大学大学院情報科学研究科教授。専門は偏微分方程式、流体力学、医用数理、医療×AI。高校・大学を通じて数学に魅了され、大学院では偏微分方程式の理論研究に取り組む。その後、医師や工学研究者と協働しながら、「血流をはじめとする体内の現象を数学とコンピュータで可視化する」研究へと発展させてきた。
現在は、CT・MRI・4D-CTA などの医用画像から血管形状を再構成し、数値流体力学(CFD)により血流や圧力の分布を解析することで、動脈瘤や先天性心疾患などのリスク評価・手術計画の高度化をめざしている。AIは「魔法の箱」ではなく、数学的原理に基づいたモデルと現場の知見をつなぐ“道具”だという立場から、数理・CFD・AIを組み合わせた医療応用に取り組んでいる。JST-CREST などの大型研究プロジェクトの代表も務め、数学・情報科学・医学の研究者や医療現場のチームとともに、「論文で終わらない数学」を社会実装につなげることを目標としている。難しい数式だけでなく、その背後にあるイメージやストーリーを大切にし、中高生や一般の方にもわかりやすく伝える講演を心がけている。
主な講演のテーマ
1.数学で血流を見る — 心臓や脳の中で何が起きているのか
私たちの体の中を流れる血液の動きは、実は数学の方程式で記述することができる。CT や MRI などの医用画像から血管の 3D 形状を作り、数値流体力学(CFD)で血流をシミュレーションすると、「どこに負担がかかっているか」「どのような流れが危険につながるか」が見えてくる。講演では、脳動脈瘤や先天性心疾患(フォンタン循環など)を例に、「数学の方程式 → コンピュータシミュレーション → 医師の診療や手術支援」という流れを、図や動画を交えながらわかりやすく紹介する。また、「医学への応用はAIだけのおかげではなく、その土台には数学と物理の原理がある」ということもお話しします。
2.情報系を選んだ理由 — 数学がひらく進路と研究の世界
高校時代から数学が好きで、問題をじっくり考える時間が何よりの楽しみだった。その延長線上で「数学を使って現実の問題を解きたい」と思い、情報系・数理系の道を選んだ。この講演では、純粋数学から情報科学、さらに医療応用へと広がっていった自身のキャリアを振り返りながら、「数学が好き」という気持ちをどのように進路につなげていけるかをお話しする。大学での学び方、研究の面白さ、失敗とやり直しの繰り返しなど、リアルな経験を交えつつ、「情報系・数学系に進むとどんな未来があるのか」を中高生にもイメージできるように伝えます。
3.AI時代にこそ必要な「数学的ものの見方」
ChatGPT をはじめとする生成AIの登場により、「AI があれば何でもできるのでは?」という期待と不安が入り混じった時代になっている。だが、医療や工学の現場では、AI だけに頼るのではなく、「何をどのように学習させるか」「結果をどう解釈し、責任を持って使うか」という視点が欠かせない。本講演では、医療×AI の研究現場での具体的な事例をもとに、「AIはあくまで道具であり、その土台としての数学・物理・情報科学がどれほど重要か」を解説する。統計や確率の直感、モデルの前提条件を疑う姿勢、データの限界を見抜く力など、「AI時代を生きるうえでの数学的リテラシー」について、中高生や一般の方にも伝わる言葉でお話しします。
